MESSAGES メッセージ

KYUDEN i-PROJECT ADVISER

九州大学大学院経済学研究院
産業マネジメント専攻
(ビジネススクール)教授
九州大学ロバート・ファン/
アントレプレナーシップ・センター
センター長
九州大学 副理事

高田 仁

九州大学大学院経済学研究院産業マネジメント専攻(ビジネススクール)教授 高田仁

身軽さ、リピーターの多さに驚き

2017年からi-PROJECTに関与させて頂いたなかで、私の持った印象は「驚き」「手応え」「楽しさ」という3つの言葉に集約されます。


まず、「驚き」について。i-PROJECTを運営する事務局(インキュベーションラボ)の動きがとにかく速いことに驚きました。社内の調整にせよ社外の交渉にせよ、一つひとつがそれなりに時間を要するだろうと思われることに、驚くほど迅速に対応しているという印象です。勝手ながら、それまでの私の九電に対するイメージは「石橋をしっかりと叩いて渡る」でしたが、i-PROJECTに関しては、「仮で良いからさっさと橋を架けて、向こう岸に渡ってリアルに現状を掴んでから、次の動き方を決めよう」、といった印象です。この身軽さは最大の驚きです。

i-PROJECTの取組みのひとつである社内公募制度“i-Challenge”では、毎年多数の応募が続いており、リピーターからの提案も少なくありません。また、社内向けイノベーションイベントの参加者数も私の予想以上に多く、2018年度は参加申込数が多すぎて、2回に分けて開催したほどでした。そういったことが頻繫に起こるので、私が事務局に「一体、どうやって火を付けたんですか!?」と目を丸くして尋ねる場面も1回や2回ではありません。

着実に人材が育っている手応え

次に、「手応え」について。i-PROJECTの事業化プロセスでは、リアルにユーザー候補やステークホルダーの反応を確認しながらプロジェクトを進捗させるので、空論ではなく足で稼いだ一次情報に基づいて「手応え」のある議論や評価が出来ます。事業が革新的であればあるほど、到達すべきゴールが当初は不明確なので、初期段階で、たとえ小さくても素速く仮説検証を繰り返すことによって、目論見違いや自画自賛を排除することが極めて重要です。実際に、プロジェクトのメンバーが、顧客やユーザー候補に対して多くのインタビューやプロトタイプ提示を行うなかで、当初の仮説が覆され、方向転換(ピボット)を余儀なくされるシーンに数多く出くわしますが、それは健全な前進なのです。

このような取り組みを通じて、社内(含グループ会社)に着実にアントレプレナー人材が育っていることにも、確かな「手応え」を感じます。メンタリングを通じて、初期からチームのメンバーを定点観測していると、想定外の出来事や困難に直面しても、考えられる限りの知恵を絞り、事業コンセプトへの共感を得るべく周囲に何度も働きかけながら壁を乗り越えていく様子を何度も目にしてきました。そのような頼もしい人材が育つことに繋がることも、i-PROJECTの大きな意義だと言えます。

楽しさが自主性や忍耐の源

最後に、「楽しさ」について。i-PROJECT全体を通じて、応募側にも支援側にも「自分ごと」として取り組んでいる雰囲気があり、苦労のなかにも楽しさと充実感が漂っている様子が伝わってきます。社内公募制度の“i-Challenge”では、1分間のピッチ動画と書類で一次審査を行うのですが、いずれの応募者も熱量を持って、かつ、楽しげな雰囲気でピッチしている姿がとても印象的です。

各プロジェクトを評価する会議でも、社内のスポンサー(経営幹部)や社外アドバイザーが自由に意見を出し合い、良いアイデアを応援して伸ばそうというポジティブな雰囲気が醸成されています。加えて、前向きな挑戦の結果たとえ上手くいかなくても、その経験から学ぶことが大いに奨励されています。そこに予定調和感はなく、アドバイザーとして参加していて、素直に「楽しい」と感じます。

未踏の地に一歩足を踏み出すときに重要なことは、「楽しさ」です。これが自主性や忍耐の源でもあり、i-PROJECTではそういった雰囲気が醸成されていることで、結果的に取り組み全体が活性化しているのではないでしょうか。

九州大学大学院経済学研究院産業マネジメント専攻(ビジネススクール)教授 高田仁